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2025年5月9日金曜日

妊娠中のカフェイン摂取はどのくらいまでOK?|コーヒー・お茶・チョコの含有量と妊婦向け上限量まとめ

 こんにちは、相川晴です。

妊娠中にコーヒーや紅茶を飲んでも大丈夫? そんな疑問に、科学的な根拠をもとにお答えします。WHOや各国のガイドラインを整理し、妊婦が摂取してよいカフェイン量や、実際に飲料・食品にどれくらいカフェインが含まれているのかを、医師の視点でやさしく解説します。




妊娠中にカフェインを控える理由とリスク

カフェインは胎盤を通じて赤ちゃんに届きます。妊娠中に過剰に摂取すると、胎児の発育遅延や出生体重の低下、さらには流産のリスクと関連する可能性が報告されています。

とはいえ、「カフェイン=絶対NG」ではありません。多くの機関が、適度な摂取であれば問題ないという立場をとっています。


妊婦のカフェイン摂取量|各国の上限値と比較

機関・国推奨上限量備考
WHO(世界保健機関)1日300mg未満胎児の発育抑制の可能性を考慮し、条件付きで推奨(WHO, 2016)
ACOG(米国産婦人科学会)1日200mg未満中等量(200mg未満)は流産・早産との関連はないと結論(ACOG, 2010)
NHS(英国国民保健サービス)1日200mg未満これ以上の摂取でリスクが上昇する可能性あり(NHS, 2023)
RCOG(英国王立産婦人科医師会)できる限り控える/1日200mg未満死産・流産・低出生体重と関連する新たな証拠を根拠に推奨(RCOG, 2024)
日本(厚労省、学会)明確な数値の記載なしカフェインの摂取に注意喚起あり(厚労省Q&A、農水省、消費者庁)


ということで、1日に200〜300mgのカフェイン量であれば摂取してもOK、ということがわかるかと思います。(日本については、いろいろ調べましたがはっきりした数値での基準は出してないんですよね)

また、日本のエコチル調査でも、多め(1日に205.5〜5080.0mg)のカフェインを摂取していた妊婦さんから生まれた赤ちゃんは、少ない量(4.2〜86.4 mg)のカフェインしか摂取しなかった妊婦さんから生まれた赤ちゃんより、小さめであったというデータも出ています。



さて。
200〜300mgと言われても、一体どのくらいのコーヒーなの? わかりにくいよ? と思われると思いますので、日本でよく飲んだり食べたりするものの中でカフェイン量が比較的多いものを一覧表にしてみました。

コーヒー・お茶・チョコに含まれるカフェイン量一覧

飲み物のカフェイン量(100mLあたり)

飲み物カフェイン量備考
玉露(浸出液)160mg非常に高濃度(日本食品標準成分表2020)
コーヒー(浸出液)60mg抽出方法により差あり(日本食品標準成分表2020)
紅茶(浸出液)30mg一般的な濃さでの抽出(日本食品標準成分表2020)
煎茶(浸出液)20mg飲みやすいが積み重なると多めに(日本食品標準成分表2020)
ウーロン茶(浸出液)20mg緑茶と同様に含有(日本食品標準成分表2020)
玄米茶(浸出液)10mg比較的少なめ(日本食品標準成分表2020)
コーラ(コカ・コーラ)約10mgコーヒーの約1/6程度(コカ・コーラ公式)
エナジードリンク32〜300mg製品により異なる(農林水産省)
ココア<5mg製法により異なる(共立食品公式)

食品のカフェイン量(100gあたり)

食品カフェイン量備考
ミルクチョコレート約40mg明治公式より。25gあたり約10mg
高カカオチョコレート(70%)約80mg明治公式より。25gあたり約20mg
ホワイトチョコレート3〜5mgJ-STAGEデータより。微量(25〜49mg/kg)を含む可能性あり


比較しやすいように全部100g(100ml)あたりに換算しています。
ホワイトチョコレートは全く含まないと書かれているサイトもありますが、実際に抽出した研究結果を見ますと微量含まれているようです。といっても100gあたり5mg程度ですので、よほど食べ過ぎなければ心配はないかと思います。

(改めて)妊娠中にカフェインを摂っても大丈夫?

WHOは300mg未満、ACOGは200mg未満の摂取であればリスクはないとしています。

つまり、「1日200〜300mgを超えないように意識すれば、完全にやめる必要はありません」

計算はそこまで難しくありません。上の表を参考にしてみてください。

例えばコーヒー好きな方であれば、コーヒーマグカップ1杯(200ml)で120mgのカフェイン量に相当することになります。まあ1〜2杯ならOKかしら。ということになります。

でも「今日は板チョコ1枚(50gでカフェインは20〜40mgくらい)食べたし、他にも紅茶も飲んだなあ(200mlで60mgのカフェイン量)」という日には、コーヒーは1杯(200mlで120mg)くらいにとどめておくと良さそうです。なんとなく計算できますね。


(私はコーヒー大好き人間だったので、コーヒー1杯では我慢ができないため、それ以上飲みたくなった時はカフェインレスコーヒーを使っていました。味はちゃんとコーヒーしていました。)



妊娠中も、ほっと一息つく時間を

妊娠中は「これもダメ、それもダメ」と言われることが多いですし、検索すると「ダメ」という情報がたくさん出てくるため不安になりがちです。

ということで今回は根拠を示しつつ、妊娠中でも適度な量ならカフェイン摂って大丈夫だよ、というお話をさせてもらいました。

香りのよいコーヒーや、甘いチョコでホッとできる時間も大切です。と、私は思います。

科学的な根拠を知ることで、「少しなら大丈夫」と安心できると、必要以上に我慢しすぎることなく、穏やかに過ごせるかもしれません。


参考文献

2018年12月18日火曜日

妊娠中に避けた方がいい食べ物ですか?〜鰻(ウナギ)とビタミンA〜

妊娠中はうなぎを食べたらだめなんですか?

妊娠中は鰻を食べちゃダメなんですか?

鰻(ウナギ)が絶滅危惧種だから食べない方がいい……かどうかは今回は置いておいて、あくまでも「妊娠中は(食品として)鰻を食べない方がいいのか?」というお話です。

ネットを見ると「妊婦さんは鰻を食べてはダメ」みたいな話をよく見かけます。twitterでもちょっと「妊娠中、食べたらダメと言われたものはありますか」というような質問をさせてもらったところ、「ウナギ」を答えた方が多数いらっしゃいました(ご協力ありがとうございます)。

いろいろ詳しく書いてしまいましたが、結論をお急ぎの方はずずっと下までスクロールしてもらえたら「まとめと結論」という見出しがありますので、そこだけでも読んでください。

2018年12月3日月曜日

Q.妊娠中、コーヒーって飲めないんですか? 医師が解説(instagram)


妊娠中、コーヒーって飲めないんですか?

こんにちは、HALです。
コーヒーお好きですか? 私は好きです。大好きです。
さて、妊娠雑誌などを読むと「妊娠中はカフェイン厳禁」「だから妊娠中はこのお茶を飲みましょう」「妊娠中に飲むカフェインレスコーヒーならこれ」みたいな広告がたくさん出てきます。

あれ? 妊娠中ってコーヒー飲めないの?
妊婦さんは、カフェインって一切取っちゃダメなのかな……

そんな風に不安になった方もいらっしゃるんじゃないかと思います。

2018年11月27日火曜日

妊娠中にカフェインはどのくらい飲んでもOK?〜コーヒー、お茶、ココアなど〜 2018改訂版


(授乳中のカフェインについての話はこちら)

ふと麦茶などのパッケージを見ると「カフェインゼロだから、妊婦さんや子どもさんでも大丈夫」といった文句を見かけます。
他にも妊婦さん用商品に、そこまでカフェインを敵視しなくても、というくらいに「カフェインレス」「ノンカフェイン」云々の文字を見かけると、カフェイン中毒気味の私としては微妙な気分に……

コーヒーや紅茶を代表として、様々な飲食物にカフェインは含まれています。
ちなみに、チョコレートにも含まれますよ。ホワイトチョコにすら入ってます。
妊娠中に避けるべき! とあれこれに書かれてますし、「妊婦さんは飲んじゃだめ!」なんて善意で止める方もいらっしゃるため、「どうしよう、妊娠したらあれも食べれない、これも飲めない……」と悩んでいるお母さんも多いのではないでしょうか。

妊娠中のカフェインはなにがいけないのか


カフェインを含む飲料を飲み過ぎた時に、動悸がしたり不整脈が出たりしたことはないでしょうか。
カフェインには様々な効果がありますが、心血管系に働きかけて、こういった不整脈を起きやすくしたり、脈を速くしたり、血管を収縮させて血圧を上げたりする効果もあります。

2018年6月23日土曜日

妊娠中の食事と赤ちゃんの食物アレルギーの関係は?

(2014年2月8日の記事を修正しました)

妊娠中の食事が産まれてくる子どもの食物アレルギーにつながるというのは俗説なのか、医学的根拠があることなのか

妊娠中の食事が原因で赤ちゃんが食物アレルギーになることがあるの……? というのは、ただいま妊娠中の方には非常に気になる事だと思います。
ネット上でも「子供が食物アレルギーになると困るから、◯◯は妊娠中は避けた方がいいですよ。私は一切食べませんでした!」などと書かれているものを見かけます。
かくいう私自身も気になりまして。あれこれ文献をあさりました。

結論としまして、現在は

明らかな因果関係が証明おらず、妊娠中に妊婦さんが食物除去をしても赤ちゃんの食物アレルギーを防ぐ効果はなさそう」

というのが私の調べた範囲の回答です。

牛乳、卵(特に卵白)、大豆、例えばこういったものを沢山とった妊婦さんから産まれた赤ちゃんと、制限した妊婦さんから産まれた赤ちゃんを比較すると、制限した方がそれぞれのアレルギーが起こりにくかった、という報告も一応あるのはあります。
ただ、データとしては古いというのと、はっきりとがある数値、有意差があるといえる数値であるかと言われると……ない、というのが現在の主流。

一つ例をあげると、AAP(アメリカの小児学会)では
「ピーナッツを妊娠中や授乳中にお母さんが食べると、赤ちゃんのピーナッツアレルギーが増えるから避けましょう」
という見解を2000年に出しました。
しかし、妊婦さんや授乳婦さんたちがピーナッツを食べないように気をつけても、ピーナッツアレルギーは減るどころか増える一方でした。
このため、赤ちゃんにピーナッツアレルギーを起こさないために妊娠中に食事制限をさせるに足るエビデンスがないとして、2008年には撤回しています。

逆に、妊娠中にピーナッツを含むナッツ類を沢山食べたお母さんから産まれた子どもは、ピーナッツアレルギーになりにくいという報告すらあるのです。

2012年の「食物アレルギー診療ガイドライン」でも、妊娠中にアレルギー疾患発症予防のために食物制限を行うことは十分な根拠がないため、特定の食物除去を推奨しておらず、偏食をしないように注意しています。
食物アレルギー診療ガイドライン 2016

日本小児アレルギー学会,海老澤元宏 協和企画(港区) 2016-10
by ヨメレバ