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2014年3月6日木曜日

不妊と橋本病(甲状腺機能低下症)の話

(本文は下に続きます。)

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妊娠と甲状腺機能についての論議は、古くから活発にされてきました。
私自身、子どもが出来にくい(不妊の定義まではあてはまらないけれど)時期があり、それから偶然甲状腺機能低下症であることが判明し、精査を受け、橋本病であることがわかりました。そして治療を受け、今のところ無事に妊娠しています。

過去の研究によると、甲状腺機能亢進症の5.8%に不妊症を認める、というものや、橋本病を含む甲状腺機能低下症で6.2%の不妊症を認める、というものなどがあります。


潜在性甲状腺機能低下症とはなんぞや?

ところが、これらのデータは治療が必要なレベルでの甲状腺機能異常の話。
橋本病の方は、「まだ治療をするほどではないから、時々検査をして、もし甲状腺機能がもっと下がってきたら治療をしましょう」という話をされた方も多いのではないかと思います。
このような方は、甲状腺ホルモンは基準範囲にあるのですが、その甲状腺を刺激しているTSHと呼ばれる甲状腺刺激ホルモンの値が軽度上昇している状態で、これを潜在性の甲状腺機能低下症と呼びます。
この状態は、「本当は甲状腺の機能は少し落ちているのだけど、脳から送られてくる甲状腺刺激ホルモンが増える事で甲状腺が頑張ってホルモンを作っているから、体の中の甲状腺ホルモンは足りている状態」ということになります。
このような潜在性の甲状腺機能低下症でも不妊症を認めることが確認されています。
不妊症の方を検査した結果、10人に1人が潜在性の甲状腺機能低下症であることがわかっています。
さらに付け加えますと、甲状腺機能に関わらず、「抗甲状腺自己抗体」と呼ばれる、橋本病の時に現れる自分の甲状腺を攻撃してしまう抗体(抗TPO抗体や抗Tg抗体など)の検査をすると、不妊症の方の18%ほど認められるというデータもあります。

このように、甲状腺機能と不妊の関係は非常に密接です。

不妊症の方の橋本病及び潜在性甲状腺機能低下症の治療


実際に不妊の方で橋本病を含む甲状腺機能低下症をどのように治療をしてゆくか。
明らかな甲状腺機能低下症があれば、もちろん積極的な治療を行います。私の場合はこれにあてはまります。
難しいのは、潜在性の甲状腺機能低下症の場合です。
こちらの治療によるデータは、まだ多くはありません。
排卵障害を認める不妊症かつ、潜在性の甲状腺機能低下症の方に、甲状腺ホルモン補充療法を行うと、6割の方が妊娠に成功した、というものなどもあることから、潜在性甲状腺機能低下症の不妊症の方へ積極的に治療を行う必要性というのが注目されています。

基準は難しいですが、アメリカの内分泌学会や甲状腺学会のガイドラインをざっくりとまとめますと、
「不妊症の場合はTSHを検査し、潜在性甲状腺機能低下症の場合は2.5μg/ml以下になるように少量の甲状腺ホルモンの補充を考慮する」
というような提唱がされています。
ただ、アメリカなどの欧米と比較して、日本の場合は基準が厳しい(ヨードを含む海藻をよく食べるため、そもそもTSHは欧米より低めの人が多い)ので、TSHは3.0μg/mlでよいのではないかとも言われています。

更に難しいのは、「抗甲状腺自己抗体は陽性だけれど、甲状腺機能は正常」と言われた方です。
このような「橋本病疑い」の方の場合、不妊症の治療として甲状腺ホルモンを補充することの意義ははっきりと認められておりません(ないともあるとも言えない、という意味です)。それでも、妊娠後はやはり甲状腺機能低下症を起こす可能性があるので、定期的な検査は必要となります。
この範疇については、また今後新たな研究が出てくると思いますので、注目していきたいと思います。

この他にも、流産、早産についても、甲状腺機能と密接な関係があることがわかっています。が、長くなりましたのでまた後日。

以上、長々と語らせてもらいました。できるだけ平易な言葉を選んだつもりですが、わかりにくかったら申し訳ありません。
不妊症の方で、もしこれまでに甲状腺機能の検査を行っていないようであれば、一度主治医の先生にお願いしてみてはいかがでしょうか。
どうか一人でも多くの方が赤ちゃんを授かれますように。

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