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さて、妊娠期間というのは、一年とは申しませんがかなり長い期間です。そうすると、大体の妊婦さんはインフルエンザ流行シーズンを過ごす事になります。
すると、誰でも悩むことになるのが「薬も気軽に飲みにくいのに、インフルエンザワクチンを打ってもいいの?」ということです。
医学的にどうかという結論から言いますと、2013年現在の見解では、妊娠全期間を通してインフルエンザワクチンをうつことは推奨されている、ということです。
いくつかの研究は行われています。妊娠初期(胎児の器官形成に大事な時期で、奇形などの影響が出やすい時期)の投与は避ける方が、という意見もありますが、実際に奇形が増えたデータは見つかりません。全期間通して、胎児へのはっきりとした悪影響はなかった、という研究が多数報告されており、アメリカでははっきりと妊婦への接種を推奨しています。
というのも、妊娠中は免疫の機能が低下気味であり、感染すると重症化する可能性があることが一番接種をすすめる理由と思います。
重症にならなくとも、インフルエンザに感染したことで妊婦の体調悪化が胎児によろしくはなかろう、ということ、インフルエンザに感染してしまったがために様々な薬を使わざるをえなくなるより、前もって防いだ方がよかろう、というのも理由でしょう。
もっとも、抗インフルエンザ薬の数種類については、妊婦への投与の安全性がほぼ確立されています。周囲の家族などが感染した場合は予防的にそれらの薬を使うこともすすめられますので、もし周囲でインフルエンザの感染者が出た時には、かかりつけの産婦人科医にご相談ください。
更に、妊婦がインフルエンザワクチンを打っており、その子どもがインフルエンザ流行シーズンに産まれてきた場合、母体のインフルエンザへの抗体が赤ちゃんに移行していることで、赤ちゃんへのインフルエンザ感染を防ぐという利点も指摘されています。
以上から、私は、母体がインフルエンザワクチンを受けることができない体質(例えば極端な卵アレルギーなどがある、など)でなければ、うけることをおすすめします。
インフルエンザワクチン自体の効能については、実は賛否両論あります。基本的に、感染を完全に防ぐものではないことは知っておいてください。感染はするけれど、重症化を防ぎやすい、というのが一番正しい表現でしょうか。
結局のところ、インフルエンザウイルス含めて、風邪やらノロウイルスやらの予防のために、外出時の正しいマスク着用、帰宅時のうがい手洗いは必須です。特に人ごみに行く時は、母体と赤ちゃんのために、面倒でもきっちりマスクをつけましょう。
それから、妊婦用インフルエンザワクチンの話をされる方がいますが、基本的に妊婦用のインフルエンザワクチンというものはありません。防腐剤(チメロサール)を含まないワクチンのことを指していると思います(チメロサールはエチル水銀チオサルチル酸ナトリウムの商品名です)。
この防腐剤が含まれているものが特に胎児への影響を与えるというデータは、海外で過去に発達障害の報告はあったが、最近の調査によると関連性はないようですので、
「しまった! 普通のワクチンを打たれてしまった!」
「先生、なにも言ってなかったけど、あれってどっちなんだろう……」
と焦る必要はないと思ってください。
ただ、まあ妊婦さんには無駄に防腐剤を体内にいれなくてもよかろう、くらいの気持ちで防腐剤抜きのワクチンをうつところがあるんだな、と思っていてください。(現在、予防的にできるだけ除去するよう各国の製薬会社が努力しているようです。)
詳しい研究データなどが知りたい方は、厚生労働省、日本産婦人科学会などで見解が書かれていますので、よかったらご一読ください。(リンクを貼ろうかと思いましたが、医療従事者向けのページになっていた分は自重しておきます)
日本産婦人科学会
妊娠と薬情報センター
私ももちろん、受けてきました。特に私は医師なので、業務上インフルエンザウイルスに暴露される可能性が高いため、受けないという選択肢はありませんでした。
勤め先でうけたので、妊婦である申告はしましたが、特に防腐剤のことは言わなかったのですが、
「じゃあシリンジので……(←シリンジの製剤のものは防腐剤が入っていない)」
と問診の先生が気を利かせてくださいました。お気遣いありがとうございます。
まあ、接種後数日体調を崩し、打たれた二の腕も少し腫れましたが、これは妊娠前からの私の体質です。
情けない事に、毎年ワクチン後に体調を崩し、かつ大体毎年インフルエンザにも軽く感染するのです。まあ、暴露される機会が多いのも原因でしょうが、医者の不養生といいますか、免疫系がどうにも弱いと申しますか……。
私の場合、気道粘膜での免疫が弱いようです。職場ではマスクをつけていますが、外出時にマスクを忘れると大体なにやらの病気をもらってしまいます。←一度真面目に免疫系の検査を受けた方がいいかもしれません。
今年の冬は、マスク常備で頑張って乗り切ろうと思います。