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2016年8月25日木曜日

麻疹(はしか)はなぜ怖い〜感染力の強い麻疹とワクチンの話〜

(本文は下に続きます。)

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麻疹が流行のきざしを見せています。というのも、

<麻疹>大規模コンサートに感染者 2次感染可能性を警告(毎日新聞) - Yahoo!ニュース http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160824-00000076-mai-soci

……というニュースもありますが、それ以前にそもそも千葉県で患者さんが増えていると千葉県から発表が出ています。
麻しん(はしか)の発生について
https://www.pref.chiba.lg.jp/shippei/press/2016/mashin20160816.html

これが東京などにも広まれば、全国的な流行を起こす可能性が高まります。

追記:
大阪府(関西空港)で麻疹集団感染
 http://halproject01.blogspot.jp/2016/08/blog-post_31.html
↑コンサートに参加した男性が関空利用、同型の麻疹ウイルスが集団感染しています。コンサート参加者にも2名麻疹感染疑い。
ご注意ください!

なんとしてでも食い止めるために、どうかみなさん、MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)・麻疹単独ワクチンの接種を積極的にうけてください!(おすすめは圧倒的にMRワクチンです)
特に「小さい時に1回うけたから大丈夫」と思っているあなた。
必要なのは「2回」です。
1回接種では、10年程度で麻疹を完全に防ぐ事が難しいレベルまで抗体の量が低下します
ぜひ、流行前の今、急いで受けに行きましょう!


麻疹(はしか)はなぜ怖いのか、少しお話ししたいと思います。
かつて「はしかのようなもの」という慣用句が存在するほど、「誰もが一度は経験するもの」という認識だった麻疹(はしか)。
何故そう言われるかと言うと、もちろん昔はワクチンが存在しない&普及していなかったからに他ありません。

まず麻疹は空気感染します。したがって、普通のマスクでは防ぐ事ができません
ワクチンがなければ麻疹になる……そのくらい、麻疹は感染力がとても強いのです。
麻疹は1人の感染者がいた場合、免疫を持たない人何人に感染させることができるでしょうか。これを基本再生産数といい、麻疹の場合これは12〜18人と言われています。
「なんだ、たったの10人そこら?」と思われるかもしれません。
感染力が強いということで知られているインフルエンザでは、2〜3人です。比較すると、麻疹の感染力の強さが際立つと思います。
一人が感染させるのが10人そこらであったとしても、うつった人がまた次に感染させていきます。これが感染症の恐ろしいところです。


これに対して、一体周囲の人がどれだけ麻疹の免疫を持っていれば、流行を阻止出来るでしょうか(集団免疫率と言います)。これは90〜95%とされています。
つまり、9割以上の人がワクチンを打っていなければ、麻疹は流行を起こすのです。


では日本での実際の麻疹抗体価はどうか。2013年度の調査になりますが、最低限の陽性レベル(抗体価1:16以上)でいうと、2歳以上では各世代で95%以上の抗体陽性率を達成しています。
しかし、麻疹を確実に予防出来るラインの抗体価(抗体価1:128以上、できれば1:256以上)で調べると、90%以上を示したのは、なんと15歳、18歳、19歳のみ(!)でした。
麻疹は、流行する余地が多いにあることがわかっていただけるかと思います。
(ちなみに、予防接種を受ける事ができない0歳児は、移行抗体のある0〜5か月交代が60%程度認められますが、それ以降の移行抗体が減る月齢では4%しか抗体が認められません。生後半年を越えた方がむしろ危険であることを念頭においておいてください。)


麻疹は、発疹(ぶつぶつ)がでることが有名ですが、実は少し熱があるな、鼻水がでるな……という、発疹の出る前の時期(カタル期といいます)が一番感染力が強いと言われています。そのため、最も感染力の強い時期に気づかず行動し、思わぬ感染拡大を引き起こすことになります。(前述のニュースの患者さんは、発疹が出た以降での行動&コンサート参加だったため、最悪の状況は免れていると思います……もちろんその時期でも感染力は強いため、油断は禁物ですが)。


麻疹にかかると、簡単に言うと、大人も子どもも「酷い目に遭います」。
発熱や発疹ときくと、「なんだ、熱が出てブツブツができるだけの病気じゃないか」と軽く考えてしまいがちですが、重症度が全く違います。
2000年の大阪での麻疹流行時、合併症の発症率は30%、入院率は40%です。
現在でも、麻疹は「治療法はなく、対症療法しかありません」。
長くなってしまったので、細かい症状は割愛しますが、恐ろしい合併症(肺炎、脳炎など)があり、今でも死亡する病であると心しておいてください。
更に個人的に恐ろしいのは、麻疹の患者さん10万人に1人起こる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)です。主に幼少期(主に1歳未満)に感染した麻疹患者さんが、学童期を越えて徐々に様々な神経症状を発症し、数年から十数年で死に至るという、非常に怖い重篤な疾患です。


長くなりました、まとめます。
つまり、
麻疹は、絶対かかるべきではない疾患であり、治療法はないけれども、ワクチンで防げる病です。
幼い赤ちゃんはワクチンを打てません。
しかし、あなたがワクチンをうつことで、流行を防ぎ、赤ちゃんを守ることができます。
あなたの子ども、次世代の子ども、その命を救えるのは、あなたしかいません。
ワクチンをうてば、95%の人に抗体ができます。2回目をうつことで、その残りの5%の人にも抗体ができるのです。時間経過で抗体は徐々に低下します。そのため、時間をおいて2回接種する(1歳児と小学校入学前)、という定期接種の制度がとられているのです。

ワクチンの効果についての考え方は、ワクチンの効果と「集団免疫」という考え方(別ブログです)に書いていますのでご参考に。
特に「俺はかかっても困らないし」「自然にまかせりゃいいんじゃね?」というワクチンなんとなく拒否派の方に読んでいただきたいです。



ブログの性質上、妊娠中の方が読む場合が多いと思うので、妊娠中のワクチンの対応について書いておきます。
麻疹のワクチンは、麻疹単独ワクチン、MRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)がありますが、どちらも妊娠中は接種することができません。(風疹についての記事は「ぜひ妊娠前に自分と家族に風疹ワクチンを!」などに書いていますので参考にどうぞ)
ですので、まず妊娠前にぜひMRワクチンを接種しておいてほしい! パートナーにも、強く強くすすめましょう。
また、妊娠がわかった時に抗体価を調べることが多いと思います。風疹は確実にチェックされますが、できれば麻疹も調べてもらってください。
これで、もし抗体価が低いとわかった場合、ぜひ「家族を含む周囲の人たち」に、MRワクチンを接種するように強くすすめてあげてください。
そして、出産後には忘れずにMRワクチンをうちましょう! 次のお子さんが出来た時に後悔しないために、ぜひかかりつけの産婦人科に産後のワクチン接種スケジュールを相談しておいてください。

私自身も妊娠前に風疹抗体価を確認し、低い抗体価だったためMRワクチンを接種しました。麻疹は抗体価があることを確認していましたが、在庫不足ということもありMRワクチンとなりました。ブースト効果を考えても、それでよかったと思っています。
(このあたりは2013年の記事に書いています)。



個人的に言うなら、ぜひMRワクチンは無償化して、全力で対策に取り組んでいただきたい。
それだけの意味がある、と思うのですが……いかがでしょうか。


その他麻疹の記事については、「麻疹情報まとめ(当ブログ内)」をご覧ください。


参考ページ
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/bloc/text1.pdf
http://www.biken.or.jp/WP/wp-content/uploads/2011/12/201112.pdf
http://www.nih.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2262-iasr/related-articles/related-articles-410/4595-dj4104.html
http://prion.umin.jp/sspe/gaiyo.html
http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/