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2015年2月4日水曜日

不妊と肥満で悩んでいる方へ〜肥満と不妊・妊娠・流産の関係について少しだけ〜

(本文は下に続きます。)

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某所のQ&Aを覗いていたら、「不妊治療をしていますが、肥満なので痩せろと言われています。肥満でも妊娠した方、いますか?」というような内容の質問がありました。
そこの答えに、「私は160cm80kgでしたけど、治療ですぐに妊娠しました☆」「太ってますが、二人子どもがいます。なんのトラブルもなかったです!」「痩せた方がいいと思いますけど、太ってても妊娠中の体重管理を気をつければ大丈夫ですよー」といったものがいくつも見られ、うーむ……と唸ってしまいました。

不妊にしても妊娠にしても、その後の出産にしても、肥満というのはとにかくトラブルの元となります。それぞれについていつか詳しく書きたいのですが(私が、一応なんちゃってではありますが糖尿病などの肥満関連を専門にした内科医なので)、ざっくりとした話をいたします。

まず、知恵袋などのQ&Aサイト、本当に無責任な書き込みが多いので、参考程度にするのすら気をつけてください。必要な情報だけ取捨選択できる方は、上手にご利用ください。
先ほどの例を参考にしますと、確かに「肥満でもなんの問題もなく妊娠・出産に到る人」は数多くいます。
ただし、これは必要十分条件ではありません。肥満=不妊ではありません。肥満でも沢山子どもができる方もいます。
しかし、肥満でなかったならば妊娠できるのに、肥満が原因で妊娠できにくい身体になっているという人は間違いなくいます。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)が代表的ですが、そこまでの診断に到らずとも、肥満が原因で排卵障害や月経異常を起こすことはよく知られています。

初期の流産率についても、このような研究があります(Frequency of euploid miscarriage is increased in obese women with recurrent early pregnancy loss.)。
初期の流産について、染色体異常の有無とBMI(body mass index、肥満を量る指数、22が正常、25以上が肥満。この論文では30以上を肥満と位置づけている)の関係を調べた、というもの。
372名の患者さんで、578例の流産があり、18%が流産時に肥満でした。肥満の群と肥満ではない群では年齢の差はありませんでした。そのうち母体の細胞などを含まないものを解析した結果、117例の流産の染色体の解析を比較したところ、肥満群と非肥満群では、染色体の異常がないものが肥満群で有意に高かった(肥満群では58%、非肥満群では37%)、というのです。
初期の流産は染色体異常が原因であることが多いのですが、肥満群では染色体異常がないものが多い、つまり「肥満が原因で流産が起きた」「肥満が流産率を上昇させる」可能性が示唆される、ということです。

その後の出産に至るまでも様々なトラブルの原因になることは、多分産婦人科でいやというほど聞くと思いますので、とりあえずここでは割愛します。

肥満で妊娠している方を脅しているわけではありません。先ほどももうしました通り、肥満でもなんのトラブルもなく妊娠・出産される方は数多くいます。身の回りにも沢山います。
ただ、これから妊娠しようという方、不妊治療を頑張ろうという方に、肥満を軽視されている方が結構な数いらっしゃることが問題です。
太ってさえいなければ妊娠・出産できるかもしれないのに、「わかっているけど痩せられない」で終わらせてしまうのは、非常にもったいない事のように思います。
決して安くないお金をかけ、通院のため沢山の時間をかけ、注射の痛みにたえ……沢山の努力をされている方。
もし、過体重があるのであれば、それを治せば、妊娠できる可能性が一つ増えるのです。
体重を落とすことは、難しいことではありません。肥満ではない人と同じ生活をするだけのことだと思ってください。そのためのメソッドは、山ほどあります(希望があれば、ダイエットの記事も書こうかと思っています)。お金もかかりません。
妊娠してしまうと、ダイエットすることは難しくなります。
ぜひ、妊娠する前だからこそ、迎える赤ちゃんのためにも今のうちにダイエットをしてみませんか?