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2014年3月1日土曜日

妊娠中の下肢静脈瘤・痔・陰部静脈瘤……原因と予防・治療法

(本文は下に続きます。)

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妊娠6、7ヶ月あたりから、どうにも外陰部……膣のあたりがどうにも痛い。ひりひりするような感じが出てきました。
妊娠前、時々カンジダ膣炎で違和感を感じることがあったのですが、その感じに似ている。
妊娠中にカンジダかなあ……と思っておりものを観察するけれど……うーん、どうにもカンジダっぽい感じではない。かといって、変な匂いとかがするわけでもないし、他の感染症っぽくもない……
非特異的膣炎とかかなあ……と思って、触ってみると……ん? なんだか腫れぼったいというか厚ぼったい感じ。外陰部の後ろ半分から会陰部あたりにかけてが、えらくもったりした感じになっている。
やっとそこで気づきました。
あ、これ陰部静脈瘤だ。

妊娠中は、下半身の様々な静脈瘤になりやすい状態です。
私のような外陰部静脈瘤もそうですが、一番多いのは恐らく下肢静脈瘤。そして、肛門のところでできれば、外痔核・内痔核……所謂「いぼ痔」ということになります。

では、そもそも静脈瘤とはなんでしょうか。
血管には大きく「動脈」と「静脈」があります。「動脈」は心臓から臓器、組織に向かって血液を流す血管、「静脈」は逆に、臓器や組織から血液を心臓に戻す血管になります。
動脈と静脈はいろいろと構造が違うのですが、決定的に違うのは、静脈には「弁」があるということ。動脈は心臓からの圧力で血液を流すだけでよいので、ただの管で大丈夫なのですが、静脈はそうはいきません。
例えば、足の先から心臓まで血液を戻そうとすると、重力その他の障害に打ち勝たなければならない。当然逆流しようとしてしまいます。それを防ぐために、静脈には弁が備え付けられているのです。
で、この弁が壊れますと、逆流防止ができなくなるのでぐぐっと末梢の血管に圧が掛かる。このようにして圧が掛かって膨れたものが「静脈瘤」ということになります。
必ずしも弁が壊れる必要はありません。その他の原因でも、静脈壁が弱っているところに圧が強くかかれば異常拡張しますので、これらも全部ひっくるめて、静脈瘤と言います。


では、妊娠中になぜ静脈瘤になりやすいのか? その症状は?


原因は様々にありますが、今回は妊娠の話。
エストロゲンなどのホルモンの影響で、血管が拡張しやすくなっている、というのが一つ。
そしてもう一つの原因は、大きくなった胎児と子宮に、腹腔内の大きな静脈が圧迫されるため。この静脈は下半身からの血液を集めて心臓に戻していますので、これを圧迫すると、下半身の静脈の圧がぐっとあがります。その結果、元々壁の構造が強くない静脈がもりもりと膨らんでしまうことになります。

症状はできる部位によって違います。一番多い下肢静脈瘤だと、もちろん見た目で静脈が浮き出て見える、というのがわかりやすいものですが、なんとなく脚がだるい、ひりひりする、痛い、やたらと脚がつる、むくむ……などなどの症状が出ます。
外痔核(肛門の外側にできるいぼ痔)は痛みが強いので気づきやすいです。
内痔核(直腸側にできるいぼ痔)は痛まないので、出血したり、大きくなって外側に脱出してくることで気づかれることが多いです。
陰部静脈瘤は、やはり腫れやひりひりする痛み、熱感などの症状が現れます。


静脈瘤の治療と予防法


で、問題はどうやって治療するか、ということになります。
ぶっちゃけ、症状がなければ「ほっといても構いません」というものになります。
そもそも一番の原因は「妊娠していること」であるわけですから、妊娠の終了(つまり分娩、出産)が一番の治療です。出産するだけで軽快する方も多い。
しかし先ほど述べた原因、つまり増大した子宮に腹部の静脈が圧迫される事で悪化している状況ですから、妊娠の週数が進めば進むほど悪化することも多い。
そうなると、症状が強い場合はなんとかしてケアしていく必要が出てきます。
静脈瘤自体の治療は様々あります。例えば手術して静脈を抜いてしまうものや、血管の中に硬化剤を流し込んで潰してしまうものなどがあります。が、どれもこれも妊娠中は難しい。
ですので、とにかく悪化を防ぐように予防することが大切になります。

下肢静脈瘤を悪化させない予防法は?


下肢静脈瘤であれば、まず立ち仕事を減らす事。しかしなかなか減らすのは難しいので、空いた時間に少しでも脚を上げるのも一つ。
夜寝る時は、脚の下にクッションなどを置き、心臓より高く保った状態で寝る。
弾性ストッキングや弾性靴下を使う。これは医療用もありますが、まずは市販のあまり強くないものを使って慣らすとよいでしょう。弾性ストッキングは妊娠中には使いにくい(腹部が邪魔になる)ので、長めの弾性靴下をお勧めします。
きつい腹帯やガードルを使っているのであれば、できるだけ避ける。これらの圧迫が、大きくなった子宮を更に腹部の静脈に押し付ける手助けをしてしまいます。更に下肢の血流を悪くするであろうことは想像に難くないでしょう。
(腹帯についての詳しい説明はこちらに書いています。腹帯は必要か? メリット・デメリット・戌の日の話
下肢の筋肉は、下肢の静脈の生理的な弾性ストッキングのようなものです。動く事でポンプのように心臓に血液を戻す働きがあります。運動が止められていないのであれば、少しでも運動を取り入れるようにしましょう。
これらは、静脈瘤ができる前からしておくこともいい予防法となります。まだできていない方は、余裕があったら取り入れてみてください。
私も仕事中は、着圧靴下をはきました。トレンカタイプの足先が出るやつは、足先がかえってむくむ感じがしたので、普通の靴下。あまり強くないタイプだったので、しめつけが気にならずに助かりました。単純な予防であれば、このくらいの圧で十分だと思います。

痔核(いぼ痔)を悪化させない予防法は?


いぼ痔については、圧迫するわけにはいかないので、一番の予防は「便秘しないこと」になります。
便秘をするといきまないといけないので、腹腔内圧がぐっとあがり、痔を悪化させる原因になります。
ですので、便秘をしないように気をつけるのが一つ。(こちらこちらの記事で詳しく解説しています)
あまり座位ばかりとらないのも一つ。血流を鬱滞させないためです。
きつい腹帯やガードルも避けましょう。
他にも、妊娠中でも使える塗り薬などもありますので、症状が出てきたら早めに主治医の先生に相談するとよいでしょう。妊婦さんはよく経験することになるので、恥ずかしがらずに是非。

陰部静脈瘤を悪化させない予防法は?


で、私もなっている外陰部の静脈瘤……これがまた厄介です。
基本的には痔と同じ方法で、便秘や座位ばかりは避け、きつい腹帯やガードルはしない。
私の主治医の産婦人科の先生にも相談しましたが、
「こればかりは、出産するしかないですねえ」
と苦笑。
個人的な対処としては、トイレに座った時にトイレットペーパーを手に持ち、腫れている部分をぐっと圧迫するとだいぶ楽になりました。普段でもあまりひりひりする時は、人目につかないところでぐっと圧迫すると治まります。ただ、一時的なものなので……
で、ここで出産時の注意がでてきます。
静脈瘤は、なにせ静脈が大きく膨らんだ状態なので、それが切れると普通よい多い出血を起こすことになります。
普段の生活で静脈瘤が切れることはあまりないですが、怪我をすれば話は別。
で、出産時は……そうです。膣のあたりがとんでもなく引き延ばされるので、ばりばりと切れてしまう可能性があるんですね。
それを防ぐ意味でも会陰切開という方法で、力を一方向に逃がしてやることで、変な方向に裂傷が起きないように予防をするわけです。
が、まず外陰部の静脈瘤だと、その会陰切開の時に切りにくくなります(静脈瘤があるところを避けるため)
もう一つが、会陰切開をしても、「痛い痛い!」とパニックになって暴れ回っていると、あらぬ方向に傷ができてしまい、それが原因で出血が起こる可能性がある事……
こればかりは体質ですし、下肢と違ってあまり予防しようもない部分でもあります。
せめて出産の時にはパニックにならないように頑張る……しかなさそうです。とほほ。

(追記:幸い、程度が軽かったのか、申し送りがされてなかったのか、会陰切開は通常と同じ方向に行われましたし、あらぬ方向に避けるなんて事態にもなりませんでした。そして産後は、会陰切開の傷が治るまで、どうなったのかはっきりわかりませんでしたが、とりあえず会陰切開の傷が治る頃にはすっかり元通りに改善されていました。うーん、とはいえ、次の妊娠の時が心配だなあ……)


出産後、これらの静脈瘤の治りが悪いようでしたら、次の妊娠までに治療をするのも一つの手段だと思います。次の妊娠があれば、更に悪くなる可能性があります。
静脈瘤は主に心臓血管外科、痔核は消化器外科で治療をしています。産後、よかったら相談してみてはいかがでしょうか。